さあ、予防医療!
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全国の健康増進活動を発信「社会にひろげる予防医療!」

自治体での活動事例

企業・健保組合での活動事例

全国の自治体でおこなわれている健康増進活動の取り組みを紹介しています。
ぜひとも、皆さまの自治体での活動の参考にしてください。記事は都道府県やキーワードでの検索が可能です。

  • 食事指導
  • 生活習慣病

広島県呉市

子どもから大人まで幅広い世代への減塩啓発!
減塩意識の高い街づくりを目指して

広島県呉市では、生活習慣病による市民の死亡率が全国平均を上回ったことから、予防の一環として市民向けに減塩を啓発する事業を開始しました。市では特定健診の尿検査に「推定食塩摂取量」の項目を加え、塩分摂取量が高く改善が必要な市民に対しては、減塩について指導する教室を開催しています。また、高校生・大学生など若い世代にも、減塩に関する授業を行って減塩の大切さを伝えています。市内の保育所・幼稚園や小中学校とも連携しながら事業を進め、小学校では学校の栄養士の協力のもと、塩分量を抑えた「適塩給食」の提供を実現したといいます。今回は、事業を推進してきた呉市福祉保健部保健所健康増進課の管理栄養士小山有子さんにお話を伺いました。

生活習慣病の死亡率を下げたい! 減塩の推進を重点事業に

呉市保健所健康増進課の小山有子さん

呉市保健所健康増進課の
小山有子さん

呉市では、がん・心疾患・脳血管疾患などの生活習慣病による死亡率が、県平均や全国平均を上回っていました。この事態を重く受け止めた市は、健康増進計画で生活習慣病予防の推進を強化していくことを決め、それを受けて健康増進課では、食の分野での生活習慣病予防対策について検討し、さまざまな提案を行いました。
ちょうどそのころ、日本高血圧学会による「減塩サミット in 呉 2012」が呉市で開催され(平成24年度)、減塩に関する公開講座や料理教室が行われたり、屋台で減塩料理が提供されるなど、市民向けのイベントが数多く用意され、市民の減塩への関心を高める良い機会となりました。
これらの背景から、特に高血圧などの原因となる塩分の過剰摂取に着目した“減塩の推進”が、課内でも重要課題として認められることとなり、平成25年度からの健康増進計画の重点事業の1つとして、「はじめよう!減塩生活」をキャッチフレーズに、「おいしい減塩食で健康生活推進事業」がスタートする運びとなったのです。

本事業で目指す具体的な食塩摂取量は、当時から日本高血圧学会が推奨している1日の食塩摂取量6g未満を参考にしましたが、平成22年国民健康・栄養調査では広島県民(20歳以上)の1日の平均食塩摂取量が男性11.8g、女性9.7gであったため、まずは現実的な目標量として1日の塩分摂取量を8g未満に設定し事業を進めました。

啓発用ちらしの配布だけでは効果なし…。減塩推進につながったアイデアとは?

啓発活動の際にはお揃いの減塩ポロシャツを着用する呉市職員(提供:呉市)

啓発活動の際にはお揃いの減塩ポロシャツを着用する呉市職員(提供:呉市)

この「おいしい減塩食で健康生活推進事業」は、「減塩いいね!キャンペーン」「カラダよろこぶ!減塩プログラム」「減塩でおいしい!食育」の3つを柱としています。
まず1つ目の「減塩いいね!キャンペーン」では、講演会や広報活動などを通じて、塩分を控えた食生活の重要性と、呉市が減塩事業に取り組んでいくことを、市民の一人ひとりに周知することを目指しました。そこで初年度は、減塩による生活習慣病予防の情報を盛り込んだ啓発用ちらしを作成し、市内の全世帯に配布しました。ところが、配布後に市民に尋ねてみたところ、啓発用ちらしを見たという方は非常に少なかったのです。残念ながらこの方法では、周知の効果はほぼ得られないことがわかりました。

医療機関などに掲示したポスター(提供:呉市)

医療機関などに掲示したポスター(提供:呉市)

そこで翌年度からは、日常で自然に目が向きやすい場所にポスターを掲示するほうが効果的ではないかと考え、市民が足を運ぶ機会の多い自治会館や医療機関に掲示をお願いすることにしました。

もっと何かできることはないかと模索していた私たちは、市民の皆さんに減塩についてのお話をする機会が増えるなかで薄味の料理はおいしくないというイメージがあるため「どのような料理を作ればおいしく食べられるの?」「どれくらいの分量で作れば塩分が適量になるの?」という疑問を抱えた方が多いことに気づきました。

レシピが知りたいという声に応えて作成したレシピ集(提供:呉市)

レシピが知りたいという声に応えて作成したレシピ集(提供:呉市)

減塩がよいことはわかっても、自分の生活に取り入れる具体的な方法がわからなければ、実践にはつながりにくいのではないか……。そう考え、塩分控え目でもおいしい料理を市民の皆さんに作ってもらえるようにと、「減塩レシピ集」を作ることにしました。保健所の栄養士達がアイデアを出し合って健康増進課オリジナルのレシピをゼロから作っていき、事業開始の翌年、平成26年度には写真を中心にしたレシピ集が完成し、減塩教室や健康に関するイベントなどで配ることができました。また、レシピ集は地元の新聞にも取り上げられ、入手先の問い合わせをたくさんいただくこととなり、市民の皆さんの関心の高さを肌で感じることができました。
好評につきレシピ集は引き続き発行することになり、第2弾は市内の学校や保育所の栄養士の協力を得て給食のレシピなども掲載、第3弾では缶詰や市販の惣菜などのアレンジ方法をまとめ、「献立を考えるときの参考になる」「レシピ集があるから続けられる」と、多くの市民に喜んでいただいています。

特定健診で食塩摂取量を「見える化」、体験型教室で摂取量ダウン!

事業の2つ目の柱である「カラダよろこぶ!減塩プログラム」では、高血圧ハイリスク者などに対して食生活の改善を促す活動をしています。減塩を心がけるには、まず自分がどれくらいの塩分を摂取しているか把握することがポイントになります。そこで、市の特定健診に随時尿から1日の食塩摂取量を推定できる検査を市独自に追加し、摂取量を「見える化」しました。摂取量が数字で表れることで、自分が塩分を摂り過ぎているのか、摂り過ぎている場合にはどの程度多いのかがわかり、塩分を控えなければという意識が高まります。実際に、3年間連続で特定健診を受けた人全体の食塩摂取量の平均値は、平成25年度の8.37gから翌年は8.2g、さらに翌々年の平成27年度は8.11gに下がりました。

推定食塩摂取量平均値の推移

特定健診を受けた人全体の推定食塩摂取量は、事業に取り組み始めた平成25年度の8.37gから、翌年、さらに翌々年の平成27年度の8.11gと、明らかに減っている

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また、全4回のカリキュラムで支援する「塩減(ヘ)ルス教室」も開催しています。1日の推定食塩摂取量が8g以上、血圧が140/90mmHg以上、75歳未満という基準を設け、特定健診でこの3つが当てはまった市民には教室についての案内を送り、参加を募りました。カリキュラムでは、塩分の摂り過ぎと生活習慣病の関係を講義で解説するだけでなく、味覚体験から減塩に対する意識を高めてもらえるよう工夫しています。第1回は塩分を抑えた弁当を試食し家庭の味付けとの比較を行い、第2回では味噌汁の飲み比べでだしを効かせれば薄味でもおいしいことへの気づきを与え、減塩方法の実習を行います。個別相談の第3回までが参加必須で、第4回では調理実習で家庭での調味料の使用量を振り返る機会をつくっています。受講者の食塩摂取量は特に女性で減少傾向にあり、平成26年度は10gでしたが、受講後(翌年度)には8.7gまで減少していました。目標である8g未満にはまだ到達できていませんが、受講された方の食塩摂取量は着実に減り続けているため、教室での指導の効果を実感するとともに、今後も根気強く実施していくことが重要であると考えています。

教室参加前後の推定食塩摂取量の変化

教室受講前の平成26年度の推定食塩摂取量は男性9.8g、女性10gだったが、受講後の平成27年度は男性9.1g、女性8.7gまで減少した

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さらに、高血圧などの生活習慣病を予防するには、中高年になってから塩分を控えるのではなく、若いころから減塩に対する意識を持つことが大切だと考え、子育て世代にも、市が開催している離乳食教室のなかで減塩の効果や離乳食に適した塩分量について伝えています。離乳食が始まる時期には特に、食に対する意識は高まるので、お子さんと子育て世代それぞれの食生活に働きかけられる貴重な機会となっています。

子どもの減塩意識を高めるための作戦とは…?

企業・健保組合での活動事例