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愛媛県八幡浜市

独自の糖尿病サポーター制度で、医療費を圧迫する糖尿病の重症化を予防!~糖尿病になっても重症化しないまちづくり~

愛媛県八幡浜市では、地域ぐるみでの糖尿病性疾患予防対策を平成24年度から実施しています。糖尿病サポーター制度や歯周病検診時の簡易血糖測定をはじめとした、重症化予防事業の体制を早期に整えていたことから、厚生労働省が糖尿病性腎症重症化予防などの取り組みを客観的な指標で評価する保険者努力支援制度では県内第3位にランクインしました(平成28年度前倒し分)。市立病院、医師会、歯科医師会、介護保険事業所など多くの関係機関とタッグを組み、「実行しながら改善する」スタイルで事業を推進してきた、八幡浜市市民福祉部保健センター 保健師の中川綾さんにお話を伺いました。


医療費圧迫の要因は糖尿病にあり!
医療現場のニーズに素早く対応し事業をスタート

少子高齢化は全国共通の課題であり、ここ八幡浜市も例外ではありません。当市の高齢化率は37.4%と高く、平成32年度には約40%に達すると予測されています。また、高齢化に伴って一人当たりの医療費の増加も続いており、増大する医療費の抑制は喫緊の課題になっていました。


医療費の中でも大きな割合を占めているのが、糖尿病です。糖尿病が重症化し腎不全になり人工透析に移行した場合にかかる医療費は、一人当たり年間約500万円といわれています。平成22年度の国保特定健診の結果から、当市は糖尿病の有所見者率と糖尿病有病者(疑いを含む)の未治療者の割合が愛媛県内で最も高いことがわかっており、医療費増大の抑制を目指すには透析導入の要因となる糖尿病に焦点を当てた対策が必要だと考えていました。


そのようなとき、市立八幡浜総合病院(以下、市立病院)の糖尿病療養指導チームから、「地域全体 で糖尿病の重症化予防に取り組んではどうか」との提案がありました。市立病院では、既に糖尿病患者の治療体制について、病診連携の基礎はできていました。しかし、急速な高齢化を背景に、医療だけでは解決できない課題に悩まされていたようでした。
そこで、市の保健センターを中心に、「八幡浜市糖尿病性疾患予防対策事業」に着手しました。市立病院の提案から事業のスタートまでの期間は約3か月。市長の理解もあり、医療現場のニーズに素早く対応できたのはよかったと思っています。



地域ぐるみの事業推進は人材育成から!独自の糖尿病サポーター制度の立ち上げ

― 八幡浜市糖尿病サポーター(YDS)制度 ―


本事業では「糖尿病になっても重症化しないまちづくり」をテーマに、行政と医療、介護などの関係機関が一体となり、地域ぐるみで糖尿病の重症化予防に取り組んでいます。行政と医療との連携には市立病院の地域医療連携室の保健師が、介護分野との連携は保健センター内に設置されている地域包括支援センターが橋渡し役を務めました。

特徴的な取り組みの一つが、「八幡浜市糖尿病サポーター(YDS)制度」です。この制度は、糖尿病重症化予防に関わる関係者に糖尿病についての正しい知識の普及を目的としており、糖尿病の重症化予防に必要な知識を身につけるための講習会を実施し、受講修了者を市がYDSに認定しています。これまでに、看護師、(管理)栄養士、薬剤師、保健師、ケアマネジャー、介護福祉士、ホームヘルパーなど、糖尿病患者さんに接する機会の多い医療・介護職の関係者が認定されています。
糖尿病患者さんへの対応については、例えば高齢の患者さんがご自宅や介護施設で低血糖を起こした際、介護スタッフが適切に対処して事なきを得るケースがある反面、うまく対処できず医師の緊急対応が必要になることもあるなど、職種や各スタッフ間で知識やスキルに差がありました。地域全体で糖尿病患者さんを支援するには、知識の底上げと格差の 解消が必要だとの考えから、YDSの育成に乗り出すことになったのです。



平成25年に始まったYDS養成講座には、100人を超える受講者が集まり、平成28年度末までに262人のYDSが誕生しました。実際に医療・介護現場でスタッフが糖尿病患者さんへの対応に困っていたからこそ、たくさんの方の受講につながったのではないかと思います。


「顔の見える関係」が、多職種連携を推進するさらなるアイデアを生み出す!

YDS養成講座は知識の普及のほか、参加者同士の顔の見える関係づくりにも力を入れてい ます。講義のあとのグループワークでは、それぞれの現場での困りごとや解決策を話し合うなどして交流を深め、受講者からは「これまで接点のなかった職種のスタッフともつな がりができて、困ったときに相談しやすくなった」という声が寄せられています。


また、グループワークでの意見交換をきっかけに作成された、情報共有ツールもあります。糖尿病患者さんへの対応などを市立病院の糖尿病チームにFAXで相談できる「相談シート」です。専門スタッフからのアドバイスをもとに、介護スタッフが現場で対応できる場面が増え、市立病院の糖尿病療養指導チームも「医師の緊急対応が必要なケースが減り、病院の負担軽減につながっている」と話しています。
そのほか、医療の専門知識を持たない介護スタッフにも患者さんの病状が一目でわかるようにという配慮から、「合併症判定シール」が作成されました。糖尿病患者さんの合併しやすい各疾患をイラスト化して、リスクの程度を信号機のように赤・黄・青の3色で表しており、該当するシールを糖尿病連携手帳に貼って活用しています


歯科医師との連携で糖尿病患者を掘り起こす! その方法は……?