全国の健康増進活動を発信「社会にひろげる予防医療!」

自治体での活動事例

企業・健保組合での活動事例
閉じる

全国の自治体でおこなわれている健康増進活動の取り組みを紹介しています。
ぜひとも、皆さまの自治体での活動の参考にしてください。記事は都道府県やキーワードでの検索が可能です。

都道府県から探す

キーワードを追加する

埼玉県

「埼玉県方式」の予防プログラムで糖尿病重症化を防ぐ! 市町村への「人」「財政」「ノウハウ」の3つの支援

平成28年3月に、日本医師会・日本糖尿病対策推進会議・厚生労働省の三者によって「糖尿病性腎症重症化予防に係る連携協定」が締結され、この協定に基づいて厚生労働省は「糖尿病性腎症重症化予防プログラム」を策定しました。埼玉県では、県内の糖尿病患者の約3人に1人が治療を受けていないこと、人工透析となる原因の1位が糖尿病性腎症であることなどを重く受け止め、国に先んじて平成26年度から埼玉県医師会・埼玉糖尿病対策推進会議と連携して、糖尿病性腎症重症化予防対策を始めていました。厚生労働省の「糖尿病性腎症重症化予防プログラム」においても、埼玉県の取り組みが効果的であるとして紹介されています。今回は、埼玉県における糖尿病性腎症重症化予防の取り組みについて、プログラムの具体的内容や県の役割などについて、埼玉県保健医療部健康長寿課の担当者の方にお話を伺いました。


国に先行して重症化予防対策事業に着手、レセプトを活用し幅広く対象者を抽出

埼玉県では、平成28年の糖尿病患者数が33万人と、この15年間で約2.2倍に増加しました。しかし、治療を行っていない人がその約4割を占めています。また、人工透析患者数は平成27年には17,469人となり、透析になる最も大きな原因は糖尿病性腎症です。

そこで、埼玉県では、県民の健康寿命の延伸と医療費増加の抑制を目指して、平成26年度から19市町の国民健康保険加入者を対象に、糖尿病性腎症重症化予防対策事業を始めました(平成30年度は49市町)。事業は、糖尿病の未受診者および受診中断者に対する受診勧奨と、糖尿病性腎症の治療中で生活習慣の見直しが必要な方に対する保健指導の2つで構成されています。

まず、未受診者の受診勧奨においては、保険者である市町村が、特定健診データを基に①空腹時血糖126mg/dL(随時血糖200mg/dL)以上またはHbA1c(NGSP)6.5%以上、②eGFRが基準値(60mL/分/1.73m2)未満の両方に該当する方を抽出し、レセプトデータと照合して受診の有無を確認します。
次に、受診中断者の受診勧奨については、糖尿病性腎症と糖尿病で治療歴のある方のうち、レセプトデータを基に最終受診日から6カ月以上受診記録のない方を抽出します。

幅広く糖尿病の重症化を予防する観点から、未受診者については①のみに該当する方についても対象としています。
受診中断者についても、糖尿病性腎症だけでなく、糖尿病で治療歴がある方についても対象としています。
特に糖尿病は早期からの治療が非常に重要であること、さらに糖尿病は腎症だけでなく、網膜症や神経障害など重大な合併症を引き起こす、非常に重要な疾患であることなどから、このように腎症の基準値によらない間口を広げた形での運用も実施しています。

また、対象者の抽出では、未受診者については特定健診データとレセプトデータを用いており、受診中断者についてはレセプトデータのみを用いています。レセプトデータを活用したのは、特定健診データのみを用いるのでは特定健診受診者が対象となり、特定健診未受診者のなかにいる多くのハイリスク者を見逃す可能性があるためです。

そして、通院患者への保健指導については、レセプト・健診データから糖尿病性腎症の病期が第2期、第3期および第4期と思われる方を抽出し、がん等で終末期の方や認知機能障害がある方などを除外して対象者を選定しています。

対象者の抽出に際しては、特定健診やレセプトのデータを持つ埼玉県国民健康保険団体連合会(県国保連)と市町村が協定を締結し、スクリーニングを民間事業者に委託して行いました。


三者連携し、多数の市町村が実施している「埼玉県方式」! 県は「人」「財政」「ノウハウ」で支援


本プログラムの開始時には、市町村に対する説明会を実施し、その後も毎年継続的に説明会を実施してきました。もともと市町村の方でも糖尿病や糖尿病性腎症重症化予防の必要性が認識されていたところに、県がその具体的なノウハウを提示できたことで、多くの市町村に受け入れていただいたと思っています。

本プログラムにおいて埼玉県は、県国保連と市町村による事業実施の支援を行うという立場にあります。具体的には、3つの支援として、「人の支援」「財政支援」「ノウハウの支援」を行っています。「ノウハウの支援」としては、県医師会や県の糖尿病対策推進会議、そしてその他の県レベルの団体との調整・連携を行っています。市町村からは、県が県医師会など医療側との調整をしっかりと実施していることで、郡市医師会との調整も円滑に進めることができるとの評価をいただいています。

また、県から市町村に対する「財政支援」として、国民健康保険保険給付費等交付金(平成29年度までは、国民健康保険財政調整交付金)を活用した支援を実施しています。当交付金のメニューの中に糖尿病性腎症重症化予防(糖尿病等の重症化予防の取組)も含まれており、多くの市町村でご活用いただいております。


個々の健診データを印刷したわかりやすい通知で、早めの受診を呼びかけ


まず、受診勧奨について、平成29年度を例にご説明します。

①対象者をリストアップ
〈未受診者〉
平成28年2月~平成29年1月までの特定健診データから抽出を行い、この期間におけるレセプトデータで医療機関を受診していない方をリストアップ
〈受診中断者〉
平成28年2月~7月の半年間に受診歴があるものの、その後の8月~翌年(平成29年)1月の半年間に受診していない方をリストアップ
②1回目の通知郵送:平成29年6月(対象者に郵送にて受診勧奨)
③電話勧奨:平成29年7月~8月(市町村が電話番号を把握している対象者に委託業者から電話で勧奨)
④2回目の通知郵送:平成30年3月(郵送による受診勧奨※1
受診勧奨以降5カ月間(平成29年6月~10月)に受診しなかった方をレセプトから再抽出
※1 平成29年度より開始

次に、保健指導については、平成29年5月に保健指導プログラム参加候補者名簿を作成し、本人およびかかりつけ医の同意があった方に対して、平成29年8月または9月から保健指導をスタートしました。


幅広く対象者に受診を呼びかけた結果は……?