全国の健康増進活動を発信「社会にひろげる予防医療!」

自治体での活動事例

企業・健保組合での活動事例
閉じる

全国の自治体でおこなわれている健康増進活動の取り組みを紹介しています。
ぜひとも、皆さまの自治体での活動の参考にしてください。記事は都道府県やキーワードでの検索が可能です。

都道府県から探す

キーワードを追加する

埼玉県川越市

市民目線での情報提供で接種率アップを実現!
~高齢者肺炎球菌ワクチン定期接種事業の取り組み~

埼玉県川越市では、平成26年10月から高齢者を対象とした肺炎球菌ワクチンが定期接種となったことから、対象者全員にはがきを送り、制度についてお知らせすることにしました。初年度は大きな反響があり、多くの高齢者が接種しましたが、翌年度は同じように通知したものの、接種期限1年に延びたことが裏目に出たのか接種者数は年度途中経過では前年度を下回ると予測されました。制度内容を誤って解釈している市民も少なくなく、年明けに再度通知を行い、市民の立場に立ったわかりやすい内容にしたところ、接種者数の大幅増につなげることができました。通知を行った理由や工夫した点などについて、予防接種を担当している川越市の健康管理課にお聞きしました。


対象者へのはがき送付で想定外の反応が! 初年度は順調な滑り出し

川越市では、平成26年10月から高齢者肺炎球菌ワクチンの定期接種制度が始まったことを機に、制度対象者全員に圧着はがきによる個別通知を始めました。同じB類疾病であるインフルエンザワクチンでは通知を行っていませんが、肺炎球菌のワクチンの定期接種は生涯1度だけであること、経過措置期間(平成30年3月末まで)の制度が複雑で理解しにくいことから、対象者であることを一度はご本人にお知らせすることにしたのです。
接種の手順については、ご本人が医療機関に電話で予約し、健康保険被保険者証など年齢・住所が確認できるものを持って受診するだけの方法としました。

通知のはがきには、接種の対象となる5歳刻みの年齢を全て記載し、肺炎球菌ワクチンの解説や自己負担金額など、制度全般について掲載しました。9月に通知したところ、直後の10月は予防接種担当者だけでは対応しきれないほど問い合わせの電話がありました。接種者は通知直後の10~12月に多く、定期接種の対象期間が10月から翌年3月までの半年であったにもかかわらず、初年度に接種した方は最終的に6,871人(対象者の36.7%)となりました。


・A類疾病:人から人への感染拡大を予防するため、または病気になった場合に重篤になるおそれがあるため、特に予防接種を行う必要がある疾病(接種勧奨あり、努力義務あり)。日本脳炎や結核などが該当する。

・B類疾病:個人が病気になることや、重症化することを防ぐこと、加えて病気のまん延の予防のため特に予防接種を行う必要がある疾病(接種勧奨なし、努力義務なし)。現在はインフルエンザと、高齢者の肺炎球菌感染症が該当する。


翌年度は予想を覆して接種者数は伸び悩み

翌27年度は、定期接種が通年実施となる最初の年度だったので、どのように運用するか検討を重ねました。課内ではインフルエンザワクチンの接種シーズンと重なる秋に通知するという意見もありましたが、肺炎球菌の感染症は季節性がないこと、接種者が集中すると医療機関の負担が大きくなることを考慮し、年度初めの4月に26年度とほぼ同じ内容のはがきを送付しました。しかし、通知後の5~6月、さらには、接種増を期待した秋から冬にかけても大きな伸びは見られず、このペースでは接種期限が半年延びたにもかかわらず、接種者は26年度を下回ると予測されました。
接種者数が伸びない原因の1つとして、接種期限が長くなったことで「もう少し先でも接種できる」と考える方が増え、結果的に接種を忘れてしまっている方が多いのではないかという意見から、再通知の必要性についての議論になりました。

その議論のなかで、同じB類疾病であるインフルエンザワクチンとの公平性や、以前から市内の75歳以上の方への肺炎球菌ワクチンの任意接種助成制度も続けていること、初年度は1回しか通知しなかったのに2年目の対象者に重ねて情報提供をしてよいのかといった意見が出ました。しかし、肺炎球菌ワクチンは毎年接種するものではなく定期接種の機会は一度きりであること、経過措置の制度が複雑でわかりにくいこと、この制度は平成30年度までと限定的であること、市民が「知らなかった」「一度きりの機会を逃した」ということがあってはならないといった理由から、接種忘れ対策も兼ねて最終的に再通知の実施を決定しました。


再通知では内容を吟味、「わかりやすい」「しっかり伝わる」言葉で情報提供

今までに数多くいただいたお問い合わせの内容から、5年ごとに定期的に対象になると誤解されている方や、期限があることを認識されていない方が非常に多いことがわかりました。そこで再通知のはがきには、制度の概要の記載をやめて、最初に「希望者は3月31日までに受けてください」と期限を明記し、「あなたが定期接種の対象になって助成を受けられるのは今年度のみ、生涯1回」であり「この機会を逃すと定期接種として受けることはできない」といったわかりやすい表現を用い、平成28年1月末に再通知を実施しました。

再通知を実施した結果、想像以上に大きな反響があり、平成28年2・3月の接種者は初回通知直後の5・6月を大幅に上回りました。やはり初回通知を見落としていた方や制度の内容を間違って理解されていた方が多かったこともわかりました。
問い合わせの内容も「5年後に受ければいいですね?」から「今年限りなのですね?」に変わりましたし、「自分にははがきが来たが家族に来ないのはなぜか?」など、接種を前提とした質問が増えました。こうした市民の皆様の反応からも、情報や文章を吟味した再通知の意義は大きかったと思います。

さらに、高齢の方は「年度」という概念がない場合が多く、「今年度中」では意味が伝わらないこともあったため、お問い合わせがあった際には生年月日をお聞きして、対象者だった場合には「3月31日までに受けてください」とお話するなど、相手の目線に合わせた「簡潔で具体的な情報」を提供すべきだと改めて感じました。
結果的に、平成27年度の最終的な接種率は45.3%(8,120人)と、前年度の36.7%(6,871人)より8%ほど上昇しました。ちなみに川越市のインフルエンザワクチン接種率は約40%です。


平成30年度までは年2回通知し、「助成は生涯1回だけ」の接種を後押し

平成27年度は再通知によって明らかに接種者が増えたので、28年度も年度初めに1回目の通知を送付し、さらに1月に再通知を行いました。初回の反応は、通知の内容をわかりやすくしたことなどの影響もあってか非常に良好で、7月時点ですでに前年度の約1.5倍の接種者数に達しました。
川越市としては、定期接種対象者にはまず定期の枠組みのなかできちんと接種していただきたいので、少なくとも平成30年度までの経過措置の期間は年2回の通知を継続したいと考えています。
今回の取り組みから、わかりやすい内容での再通知が高齢者の接種漏れ防止にたいへん有用であることがわかりました。今後も引き続き市民目線の情報提供を心がけ、接種される方が少しでも増えるように活動していきたいと考えています。



埼玉県川越市はこんなまち


埼玉県の南西部にある川越市は、中心部に昔ながらの蔵造りの町並みが残っていて、江戸の面影があることから「小江戸」と呼ばれているよ。年間700万人を超える観光客が訪れる観光地なんだ。毎年10月に盛大に開催される川越まつりは、約1,500年前の古墳時代に創建された川越氷川神社の例大祭と神幸祭から始まったもので、豪華絢爛な山車が町中を練り歩くよ。「川越大師」として知られる寺院・喜多院は徳川家とのゆかりも深いんだって。



時の鐘

川越のシンボル時の鐘は、江戸時代に川越城主によって建てられたもの。今までに何度も火災で焼失したけれど、明治時代の川越大火直後に再建された鐘楼が、今も蔵造りの町で時を知らせているよ。


さつまいも

川越では、江戸時代にさつまいも栽培が盛んになったんだ。江戸で焼きいもが人気だったことから、川越で栽培して、船で江戸まで運んでいたんだね。市内の観光農園ではいも掘り体験もできるんだって。