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愛知県蒲郡市

“脱メタボ”に挑戦!「100日間の体重測定」が市民の健康意識を変えた、全庁横断的な健康づくりの取り組み

愛知県蒲郡市では、平成23年度の国民健康保険被保険者の特定健診の結果において、メタボリックシンドローム(以下、メタボ)該当者の割合が県内1位であったことをきっかけに、市役所全体で健康施策に乗り出しました。身近な健康データである「体重」に着目し、体重を毎日100日間測定し記録する取り組みを実施したのです。人口約8万人の蒲郡市で、1万人の参加を目標とした、市全体での取り組みでした。継続して体重を測って記録をすることで、体重の増減と日々の生活の仕方の関係に自ら気づき、健康意識の向上と生活改善、および体重の適正化へつなげることに成功しています。また、この事業は市民にとって、健康に配慮するきっかけになったといいます。今回は、健康増進事業の推進に携わった蒲郡市市民福祉部健康推進課の石黒美佳子さんにお話を伺いました。


メタボ1位で財政もピンチ? 健康づくりの重要性を市長が理解

蒲郡市では平成26年度に、100日間体重を測り続けることで市民に体重・健康管理を促す事業「体重測定100日チャレンジ! めざせ1万人!」を実施しました。この取り組みのきっかけは、平成23年度の蒲郡市の健康に関するデータを見てみたところ、国民健康保険特定健診でメタボ該当者割合が24.7%と愛知県内で最も高く、一方で特定保健指導終了率が4.8%と県内最下位の状況でした。人工透析者数も県内4位と多く、同時に医療費や自立支援医療(更生医療費)も増加し続けていることもわかりました。しかし、蒲郡市民のメタボ該当率が高いのはなぜだろう…。原因は明らかではありませんが、移動手段に車を利用することが多く、都会と比較して日常的に“歩く”といった習慣が少ないことなどが影響しているのかもしれないと考えます。


「市民の健康課題は市の財政にも影響する」。健康データと医療費などの財政面との関係を、資料をそろえて健康推進課から財政担当部長に伝え、財政部局から市長に説明したところ、健康づくりの重要性への理解を得ることができ、重点施策として健康づくり事業が取り上げられたことにより、平成25年度から「いきいき市民健康づくり事業」がスタートしました。


体重測定がメタボ予防に効果あり!まずは職員が試して実感

まず、平成25年度に市役所内に健康化政策全庁的推進プロジェクトを立ち上げました。チームは、日ごろ市民の健康づくりには直接かかわりのない課も含め、健康推進課が熱意のある職員に直接アプローチして集めました。チームのメンバーは、27課から44人が集まり、健康計画の策定や、5つグループに分かれて健康戦略のアイデアを出し合い、企画・推進するグループワークを行うといった活動に取り組みました。

そのなかで、1つのグループが「体重管理がメタボ対策に効果があるのでは?」と、体重測定に着目したアイデアを提案しました。まずはそのグループのメンバー7人で1カ月間、体重測定を実施。劇的な体重の変化はみられなかったものの、毎日測ることで夜遅くの食事や食べ過ぎなどの不摂生が体重に影響することをそれぞれが実感し、体重測定が日々の生活習慣や健康への意識を高めると感じました。この裏付けを取るため、対象者を増やしての検証を市役所職員に提案し、今度は市役所職員の有志69人で100日間、体重測定を行いました。測定期間を100日間に延ばした理由は、特定保健指導などの結果から、生活習慣に変化が現れるまでに最低3カ月程度は必要だと感じていたからです。庁内のインターネット上に職員だけが閲覧できるページを設け、勤務時間外で体重のデータを入力し、変化を確認しながら100日間継続すると、体重が増量した人よりも、維持あるいは減量した人が多いという結果が得られました。この結果から、体重測定は健康管理への意識を高め、日々の生活習慣を見直すきっかけになることを確信したのです。


グループや市役所職員での実施検証で「体重測定が生活習慣を見直すきっかけになる」という手ごたえを感じたことから、蒲郡市では市民にも毎日体重を測り健康への意識を高めてもらおうと、「体重測定100日チャレンジ!めざせ1万人!」と名付けた市民参加型の事業を企画したのです。市民に事業展開するためには予算が必要ですが、厚生労働省が平成26年度地域健康増進事業を公募していたため応募したところ、採択されたため補助金を活用し事業を始動させました。体重の記録・管理やデータ収集を手軽にしていただくため、通信機器やインターネット上で記録、管理、データ分析ができるICT(Information and Communication Technology : 情報通信技術)を活用しようと、プロポーザル方式でICTを提供してくれる企業を公募しました。


大事なのは続けること。
記録方法の簡略化と、メール送付や「体重測定小屋」設置で継続率アップへ

平成26年6月に補助事業の採択を受けましたが、事業を年度内に終了することが条件となっていたため、「平成26年度内に事業を実施し、年度末には報告書を提出しなければならない」・・・スケジュールを逆算すると「100日チャレンジ」の開始時期は秋より後にずらすことはできず、体制整備や周知などタイトなスケジュールとなり、ICTについては、企業が展開していた既存システムを蒲郡市用にカスタマイズして活用しました。


多くの市民に参加してもらい、測定を続けてもらうために、さまざまなアイデアを詰め込みました。測定した体重のデータは、スマートフォンやパソコンでシステム内に記録しますが、3人以上で参加する家族には先着順で通信機能付きの体重計を貸出したり、希望者にはスマートフォンなどをかざすだけでシステム内に体重の数値が送信される送信トレイを貸し出したりするなど、体重の測定・入力の手間を極力減らすよう工夫しました。高齢者の方や、紙への記録を希望される市民のために記録用紙も用意しました。


キックオフイベントと、実施期間中に開催した参加者を応援するイベントでは、その都度プロジェクトメンバーが寸劇を行って体重測定のメリットを印象づけました。また、健康推進課が健康情報を市民に向けてメールなどで配信したり、記録の入力が途切れている参加者には入力を促すメールを送ったりするなど、フォローアップにも力を入れました。用事をすませるついでに体重を測ることができるよう、市役所など市民の立ち寄りが多い場所10カ所には体重体組成計を準備した「体重測定小屋」を設けるなど、継続率を高めるための工夫も凝らしました。ICTシステム上に参加者が交流できる掲示板を設け、近況やコメントを書き込んで参加者同士が励まし合って続けられるための場づくりも行いました。さらに、歩数を競うイベントを開催したり、「100日ゴール賞」「体重が減ったでしょう」などの賞を設けて市の名産品などの賞品を用意したりと、市民の継続を奨励し、やる気を向上させる取り組みを計画・実施していきました。


1万人を目指して始めた事業、果たしてその参加者数は…?