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北海道美唄市

たばこの害から市民を守れ!
公共施設内での分煙を認めない市町村レベル初の「受動喫煙防止条例」を実現した、美唄市の取り組み

受動喫煙防止条例を平成27年12月に制定、平成28年7月から施行した、北海道美唄市。全国で受動喫煙防止の条例化が実現したのは神奈川県、兵庫県、芳賀町に続く4例目であり、公共施設内での分煙を認めない市町村レベルでの条例制定は美唄市が初めてです。条例化のきっかけや条例制定までの経緯、そして条例制定後の受動喫煙防止対策について、美唄市保健福祉部健康推進課健康推進係の望月志帆さんにお話を伺いました。


救急医療の体制を維持するには予防医療の推進が不可決!
医師会からの働きかけが条例制定のきっかけに

美唄市では平成14年度に策定した美唄市健康増進計画「びばいヘルシーライフ21(第1期)」に基づき、妊娠期からの禁煙支援と健康教育を実施してきました。その結果、健康づくりのために「たばこを吸わない」と答えた市民の割合が、平成14年の38.8%から平成23年の44.5%と増加し、特定健診受診者(40~74歳)全体の喫煙率も全国・全道と比較して低くなりました。しかしながら、年代別にみると健診受診者の40~50代の喫煙率や、4カ月児を持つ保護者の喫煙率は高く、青年期・壮年期の喫煙率の高さがうかがえたことから、市では平成25年「びばいヘルシーライフ21(第2期)」策定に向けて、たばこ対策を大きな課題と捉えていました。

そのような状況の中、美唄市医師会から、市内小中学校の敷地内禁煙、公共施設の敷地内禁煙、JR美唄駅中心市街地を喫煙禁止区域に指定する受動喫煙防止条例制定の要望書が、平成21年7月と平成23年7月の2回にわたって提出されました。

医師会が受動喫煙防止条例制定を求めた背景には、美唄市の救急医療体制を維持するには予防医療の推進が不可欠だとの判断があったと聞いています。全国的に少子高齢化が進行する中、美唄市の高齢化率も平成14年の27.2%から平成23年には34.1%へ増加し、今後もさらなる高齢化の進行が見込まれていました。同時に市内の基幹病院の医師数の減少、診療科の削減など医療過疎も進み、二次救急以上の重症患者は市外の病院に搬送せざるを得ない状況が続いていました。市内の医療資源が十分でない中、市民の命と健康を守るには救急搬送の多い脳心血管疾患の発症率低下が喫緊の課題であり、医師会では脳心血管疾患の危険因子のひとつとされている喫煙や受動喫煙の防止を最重要課題と位置づけていました。

要望書の提出だけでなく、市長や市議会との意見交換や懇談会を重ねるなど、医師会からの熱心な働きかけが継続的にあったほか、健康づくりを推進する役割を担う関係団体・組織の認識も高まったことで、平成25年度に策定した「びばいヘルシーライフ21(第2期)」に受動喫煙防止のための「条例を整備」というアクションプランが搭載され、これが条例化を進める大きな一歩となりました。


普遍的に、責任を持って受動喫煙防止に取り組むために!
上程見送りという「挫折」をバネに、条例成立へ

その後、市では「たばこの煙から市民を守り、市民が健康で快適に過ごすことができる環境づくりを推進すること」を目的に、平成26年12月に「美唄市受動喫煙防止対策ガイドライン」を、平成27年2月に受動喫煙防止条例の素案を策定しました。同年2~3月に実施したパブリックコメントでは、意見数554件のうち条例制定に賛成・賛同する意見が462件(83.4%)、反対意見が66件(11.9%)という結果となり、年度内の条例化を目指して準備を進めていましたが、その直後に「条例制定への慎重な検討を求める」署名616筆が市議会議長、市長宛てに届き、市長の判断で条例案の上程を見送ることになりました。

ここで仕切り直しとなったわけですが、条例制定に賛成の声も慎重を求める声も、どちらも大切な市民の意見です。「受動喫煙防止の必要性を市民に十分周知し、幅広く議論する場を設ける必要がある」との考えから、健康推進課が事務局となり受動喫煙防止対策市民検討委員会を立ち上げました。メンバーには医師会や歯科医師会、保健推進員協議会、運動推進員のほか青年会議所や商店街組合、料飲店組合、宿泊施設事業者、たばこ販売協同組合など、条例制定に慎重な意見を持つ方々にも加わっていただきました。委員会は平成27年7月から月1回のペースで5回開催しました。さまざまな立場の方に幅広く議論していただいた結果、最後の委員会で条例制定を支持する内容の総括が出され、これを受けて平成27年12月、市議会に条例案を上程、全会一致で可決されました。


条例案の市議会への上程を見送ったものの、約1年をかけて条例制定しました。ガイドラインをゴールとせず条例化にこだわったのは、この先たとえ市長や市議会議員、担当者が代わっても対策を継続していくには、ガイドラインではなく条例が必要だと考えたからです。条例は決して市民を締めつけるものではありません。市民の皆さんに受動喫煙の害が及ばないように、行政が責任を持って対策を講じるために、「普遍的に、受動喫煙防止を推進していく」という市の強い意志を示す意味でも、条例制定の意義は大きいと思っています。


受動喫煙防止条例の成立を受け、さまざまな対策に着手! その内容と成果は……