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企業・健保組合での 活動事例

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全国の企業・健保組合でおこなわれている健康増進活動の取り組みを紹介しています。
ぜひとも、皆さまの企業・健保組合での活動の参考にしてください。記事は50音順(企業名)やキーワードでの検索が可能です。

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キヤノン株式会社

良質な睡眠が健康をつくる!
睡眠を切り口にしたアプローチでメタボ社員が減少!

キヤノン株式会社は、「健康第一主義」の行動指針の下、法制化以前から定期健康診断や長期休暇制度を導入するなど、さまざまな健康支援を時代に先駆けて実践してきました。近年は「メンタルヘルス対策」「生活習慣病対策」「がん対策」「過重労働対策」の4つを重点項目に掲げており、2007年からは生活習慣病の予防策として「睡眠・運動・栄養」の各テーマに3年サイクルで取り組んでいます。特に睡眠に関しては、睡眠時無呼吸症候群(以下、SAS)のハイリスク者を対象とした個別支援を実施。参加者のうちメタボリックシンドローム(以下、メタボ)該当者が約3割減少という成果につながっています。キヤノングループ全体の健康支援を担当する、人事本部安全衛生部長の田原弘巳さんと、安全衛生部副部長・健康支援室長の矢内美雪さんにお話を伺いました。


創業期から受け継がれる「健康第一主義」を軸に、
「キヤノン式健康経営」を実践!

キヤノンでは、「健康第一主義」と、自覚・自発・自治の「三自の精神」の二つの行動指針を軸に、さまざまな健康支援を行っています。「健康経営」とは、会社が社員の健康に投資し、生産性や業績向上などのリターンを期待するという考え方が一般的かと思いますが、私たちは「健康経営は会社と社員の相互作用があって初めて成り立つもの」と考えており、会社が社員に安心して働ける環境を提供する一方で、社員も自らの健康状態を知り(自覚)、自分で改善・向上に向けた行動を起こし(自発)、 継続的に自己管理する(自治)ことを目指してきました。

「健康第一主義」は、医師でもあった初代社長の「我々が努力していく上で一番大事なのは健康である」という言葉を受け継いだものです。社史をひも解くと、1940年代には専属の産業医、保健師が在籍しており、社員の健康診断や予防接種の実施を法制化以前から、3年間の傷病休職制度をはじめとする長期休暇制度を早期に導入するなど、時代に先駆けて社員の健康支援に取り組んできました。その背景には創業間もない時期に肺結核の発見を目的とした国産初のX線間接撮影カメラを開発したメーカーとして、まずは自社の社員の健康を大切にすることからやっていかなければという想いがあったのではないかと思います。


コラボヘルスや拠点同士の連携により、グループ全体の健康支援を推進!

当社には国内に本社を含めた12拠点、グループでは約40拠点があり、全拠点に看護師や保健師を、一部拠点にはさらに専属の産業医を配置しています。グループ全体の健康支援活動の基本方針や目標は、代表取締役副社長が委員長を務める中央安全衛生委員会で決定し、それをもとに各拠点の医療職や健康支援室の担当者ら産業保健スタッフが、それぞれの拠点に合ったやり方で健康づくりに取り組んでいます。さらに、中央安全衛生委員会のほか、産業医が集まる産業医分科会や健康支援担当者連絡会などの各種連絡会を定期的に開催しており、拠点同士で情報や活動内容を共有し、各自の取り組みに活かしています。

また近年では、健康保険組合との協働で健康管理ができるスマートフォンアプリを全グループに導入するなど、コラボヘルスを積極的に推進しています。アプリは健診結果を経年的に確認できるほか、将来の生活習慣病発症リスクの予測や、自分の健康状態に応じた健康情報の提供など、生活習慣病予防に役立つコンテンツが揃っており、全社員の7割程度が登録しています。また、アプリを利用したチーム参加型のウォーキングイベントを年2回開催することで、個人の健康づくりはもちろん職場内のコミュニケーションの活性化にもつながっています。
2020年からは、内閣官房東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会推進本部事務局が実施している「beyond2020マイベストプログラム」にも参加する予定で、健康保険組合がツールを提供し、労働組合が周知することによって、社員一人ひとりが実行するコラボヘルスを進めていくことにしています。


「睡眠指導は一石三鳥」のアドバイスを受け、全社的な快眠キャンペーンを展開

当社では生活習慣病の予防対策として、2007年から「快眠キャンペーン(睡眠)」「かるがる動こうキャンペーン(運動)」「野菜キャンペーン(栄養)」を3 年サイクルで実施しています。
睡眠負債という言葉が一般的に知られるようになったのは2017年頃からだと思いますが、それに先駆けて睡眠に着目したのは、外部のコンサルタント医から「睡眠指導は一石三鳥。メンタルにもフィジカルにも、生産性にも良い影響を与える」とアドバイスされたことがきっかけでした。実際に、特定健康診断の質問項目とメタボとの関連を分析したところ短時間睡眠群のメタボ率が高かったこともあり、睡眠施策の取り組みを始めることになりました。

当社の睡眠施策は、一次予防として全社員向けに広く啓発を行うポピュレーションアプローチと、二次予防として睡眠に課題を抱える人やハイリスク者に対して行う個別支援の2本柱で進めています。一次予防に関しては2007~2009年と、2016~2018年に「快眠キャンペーン」を展開。睡眠に関する基礎知識や、年代別などの特徴に応じた啓発・情報発信のほか、管理職や職場安全衛生委員会の協力を得て職場内で睡眠についてディスカッションする場を設けてもらったり、社内売店にノンカフェイン飲料コーナーを設置したりというような環境整備を行いました。さらに、社内の総合デザインセンターに依頼してキャンペーンキャラクターを作成して社内に掲示するなど、睡眠改善に取り組む気運を盛り上げる仕掛けも考えました。


その結果、キャンペーンを開始した2007年に、定期健康診断時の問診で「睡眠による休養がとれている」と回答した社員の割合が53.0%だったのに対して、2019年には65.8%となり、約13%の改善がみられました。ただし、この結果は快眠キャンペーンのみによるものではなく、当社の働き方改革により、総実労働時間数が減少したこともプラスに働いたと考えています。


メタボ社員の睡眠に介入!果たしてその成果は……